医療のフリーアクセスとは
勉強したら、いちばん最初に出てくるな!
これが日本が世界に誇る医療保険制度の特徴の3大柱だからね!
- 国民皆保険制度
- 現物給付
- フリーアクセス
日本全国どこでも行きたい病院を自分で選べるんが、そんなにすごいことなん?
たしかにずっと日本に住んでいたら、ありがたみは感じにくいかもしれないけど、アメリカやイギリスだと「ありえない」よ!
- フリーアクセスとは、行きたい病院に行ける!自分で病院を選べることをいう
- フリーアクセスではない例には、次のようなものがある
- 地域のかかりつけ医(登録したクリニック)の紹介状がなければ、他の病院に受診できない(例:イギリス)
- 自分が加入している民間保険と契約している病院しか受診できない(例:アメリカ)
医療のフリーアクセスとは
医療のフリーアクセスとは、患者が自分の意思で行きたい病院に行くことができる、自分で病院を選ぶことができる仕組みのことです。
保険証を持って受診すれば、全国どこの保険医療機関でも自己負担割合は同じです。
(保険医療機関とは、保険診療ができるよう届出を行った病院、診療所のこと)
このフリーアクセスは、日本の公的医療保険制度の特徴のうちの1つです。
- 国民皆保険制度
- 現金給付
- フリーアクセス
医療のフリーアクセスは、こうして誇らしげに「日本の医療制度はすばらしい!」とアピールされている3大柱のうちの一つです。(厚生労働省のホームページなどを見てみてください)
現物給付ってなに?って思った方は「【図解でわかる】現物給付とは」をチェック!
逆に聞くけど、なんで日本はフリーアクセスができるん?アメリカやイギリスはやってないんやろ?
医療保険制度は国によって全然違うから単純な比較はできないけど、理由を考えてみたよ!
どうしてフリーアクセスが可能なのか?
日本でなぜ医療のフリーアクセスが可能なのでしょうか。本当のところ、鶏が先か卵が先かみたいな議論になってしまうかもしれませんが、3つの理由があると考えます。
- すべての人が公的医療保険に入っている「国民皆保険」が成り立っているから
- 医療にかかる値段が決められており医療費が安いから
- ほとんどの医療機関が保険診療ができる許可をもらっているから
この3つの理由が相互に支え合って、フリーアクセスが成り立っています!1つ1つを詳しく見ていきましょう。
① すべての人が公的医療保険に入っている「国民皆保険」が成り立っているから
日本ではすべての人が何らかの公的医療保険に入っています。(厳密には生活保護を除きます)
保険証を持って病院に行けば、1〜3割の自己負担で医療サービスを受けることができます。
安いだけではありません。保険証を使える病院は、ちゃんと国(厚生労働省)の許可をもらっているので、アンダーグラウンドな病院ではありません。
もっというと、保険医療機関で働いている医師は国家資格を持って保険医として国(厚生労働省)の許可をもらっているので、ある一定の質は担保されています。結婚詐欺師のように「自称医師」は勤めることはできません。
これって当たり前のようですが、ちゃんと保証されているから、安心して受診することができるんですね。
② 医療にかかる値段が決められており医療費が安いから
資本主義社会では、モノの値段は需要(買いたい人)と供給(売りたい人)のバランスで決まります。
ニンテンドーSwitchも欲しがる人が多いから定価よりも高い値段で転売する人がたくさんいましたよね。
でも、医療は違います。病院に保険証を持って行き、自己負担割合が1〜3割で受けられる医療サービス(=保険診療)は、公定価格といって基本的に全国一律の値段が決められています。
経済格差によって医療格差があってはならない、命の値段に差があってはならない、と考えられているからです。
だからこそ、神の手を持つベテランのお医者さんの手術も、独り立ちしたばかりのお医師さんの手術も、値段は一緒なのです。(〇〇人待ち、とかはありますが)
③ ほとんどの医療機関が保険診療ができる許可をもらっているから
病院もお医者さんや看護師さんにお給料を払ったり、高額な医療機器を買ったりしなければなりませんから、稼がなければ続けていくことはできません。
資本主義的な考え方をすれば、神の手を持つベテランのお医者さんと独り立ちしたばかりのお医者さんの手術の値段に差をつけたいところ。
しかし、基本的には保険診療と自由診療を同時に併せてすることはできないルールがあります。自由診療をするなら、保険診療を使えるはずの医療サービスも10割負担になったりします。
すると、ほとんどの人は損をしたくないので、保険診療を使いたがります。
あなたがもし、保険証を持って行った病院で
「うちは保険は扱っていないので、うちの院長が決めた値段になります。初診は10万円ですし、自己負担10割になるんですけどいいですか?」と言われたら
「あ、じゃあいいです。別の病院探します」
ってなりますよね?
日本のどこかに、東洋医学やアーユルヴェーダなどを取り扱う自由診療のクリニックがありますし、ブラックジャック的な医師もいるかもしれません。しかし、ほとんどすべての人は保険診療を希望しますよね。
だからこそ、ほとんどすべての病院や診療所、クリニックなどの医療機関は、たとえ自分で医療サービスの値段を決められなくても、保険診療ができるように保険医療機関として許可をもらっているのです。
なるほど!日本サイコー!はわかったけど、鶏やがワシは国産やで?
ずっと日本に住んでるってことね(笑)
逆にフリーアクセスじゃないってことが想像できひんわ
じゃあ、イギリスとアメリカの例を簡単に説明するよ!
フリーアクセスじゃないってどういうこと?
イギリスの例
イギリスには、NHS(National Health Service、国民保健サービス)という税金でまかなわれる公的医療制度があります。
患者ごとに地域の医師(かかりかけ医)を決める必要があり、病気になったときは、まず自分が登録した地域の医師(かかりつけ医)を受診しなければいけません。
かかりつけ医が必要と認めて紹介状を書けば、他の病院(大きな病院や専門病院)に受診することができます。逆に言うと、かかりつけ医が紹介状を書かなければ、他の病院に行っても診療してもらえません。
基本的に地域の医師は公務員で、公的医療は原則無料ですが、緊急でない場合は2〜3週間待たされることもあるようです。
また、薬剤に「費用対効果」という考え方が用いられています。
命の別状のない一般的な風邪薬などは全額自己負担である一方、飲まなければ死んでしまう薬(=服用すれば余命が伸びる効果がある)は、高額であっても無料になることも。
アメリカの例
アメリカには、
- 65歳以上の高齢者
- 一定の障害を持つ人
- 低所得者
以外に公的な医療保険はありません。医療ローンで破産も珍しくありません。
オバマ元大統領は国民皆保険制度を掲げて8年がんばりましたが、結局骨抜きにされてしまいました。
日本の民間保険は公的医療保険を補完する保険商品ですが、アメリカの民間保険は違います。アメリカでは日本でいう民間保険がすべてなのです。
自分の入っている民間保険会社が「ここの病院ならOKですよ」という病院に受診するのです。
月々の掛け金によって受けられる保障が違うということは想像つきますね。掛け金が高くなればなるほど、良い医療サービスを受けることができます。
年間に払う保険料が年間400~600万円になることも普通らしい…
ギョエーー!!!!!
今後、フリーアクセスは維持できるのか?
結論からいうと、日本でフリーアクセスを制限することはできないので、フリーアクセスは維持できるでしょう。
今でも紹介状なく大病院などに受診すると、5,000円くらいお金が上乗せされることもあります。(病院によってお値段が異なる)
大きな病院の多くは
- 高度で専門的な医療に集中したい
- 救急医療に専念したい
と思う一方で、
- 軽微な外来で収入が支えられている
というジレンマを抱えています。
国民の立場からみても、フリーアクセスが制限されることは猛反発があることは簡単に想像できます。今までどこの病院に行っても良かったのに、いきなり
- 「あなたは近所の〇〇クリニックしか受診してはいけません!」
と言われたら
- 「あのクリニックの先生は怖いから嫌だ!」
- 「職場の近くの病院がいい!」
- 「昔からお世話になっている先生がいい!」
ってなりますよね。
したがって、今後もフリーアクセスが制限されることはありません。
しかし、内科や外科や眼科、耳鼻咽喉科など、さまざまな診療科のある総合病院に患者さんが行きたがって、高度で専門的な医療がままならない!という現状があるので、何かあったらまず受診する「かかりつけ医」を決めるという制度の創設はあるかもしれません。
まとめ
インターネットの世界では「日本オワコン説」や「医療崩壊」「年金崩壊」と叫ばれていますが、世界的にみればまだまだ素晴らしい制度です。
しかし、少子高齢化と経済の低成長によって、年々改悪が続いているのも事実です。
未来の自分が「知っておけばよかった…!」と後悔しないように、しっかり制度を学んで理解し、ニュースにアンテナを張って変化に対応していけるようにしましょう。
人はいつか死にます。絶対に死にます。そのときに必ず医療のお世話になります。
公的医療保険制度のことは学んでいて損はまったくありませんので、以下の記事を読んで備えておきましょう!